金森弁護士の法律相談所
勤務先の会社で行われている違法行為を公にした場合、何らかの法的責任が問われますか。
以前話題になった「赤福事件」も公益通報がきっかけで判明しました。会社勤めしていると、会社の裏の裏まで見えるようになることもあると思います。会社が不正な行為を行い、その結果社会全般や消費者に害悪が発生しているにもかかわらず、それを会社内でもみ消そうとしているところを見てしまった場合、黙っておれないという人も少なくないと思います。その場合、会社の不正行為を会社の管理部門・ないしは外部(行政庁など)に通報することは、許されるのでしょうか。
この点、労働者は、会社と雇用契約を結んでおりますので、会社の利益のために労務を提供する義務があります。そして、雇用契約上の義務の一内容として、会社に関する情報を他言しないという秘密保持義務があります。
とすると、公益通報の場合、会社に関する情報を開示している訳ですし、しかもそれが会社にとって不利益な内容ですので、労働者の本質的役割(会社の利益のために労務を提供する)に反するということで、懲戒処分の対象となったり、名誉毀損として不法行為責任(賠償責任)を負うことになるように見えます。
しかし、企業内部のことは内部の人間にしか分からないわけです。会社内部で不正なことが進行しているのに、それがベールに包まれたままというのでは、不正な行為を差し止めることができません。害悪は、一旦発生してからでは完全に原状回復を図ることは不可能ですし、発生してからでは遅いのです。不正な行為については、出来る限り早い段階で明るみに出て、相応の行政対応でストップされなければ、消費者としても安心して生活をすることができません。
そこで、平成18年4月1日より、公益通報者保護法が施行されました。具体的に、(1)通報の内容が、消費者利益(生命・身体・財産など)を侵害する法令違反を対象とすること (2)保護の対象を、事業者に雇用されている労働者とする (3)個人的利益を図ったり、嫌がらせ目的の通報ではないこと (4)行政機関への通報は、誠実に、かつ通報の内容が真実または真実と信じることについて相当の理由があること (5)行政機関以外の外部への通報は、(4)のほか通報の対象となった事業者の行為によって発生し、または発生するおそれのある被害の内容・程度等に応じ、これを防止するための相当な通報先であるとともに、事業者内部に通報すれば、労働者が不利益な扱いを受けるおそれがあること、といった場合には、公益通報にあたり、保護されることになりました。
たとえば、製造メーカーが環境破壊につながる原料を使って製造を行っていた場合、単純にその不正をただす目的で、その製造に携わっている労働者が、関係資料を提供して、県の担当部署に通報したという場合には、公益通報として保護されるのです。
そして、具体的に保護されるということは、公益通報をしたことによって、解雇その他の懲戒処分を受けることはありませんし、労働条件で不利益な取り扱いをすることも禁止されております。また、会社に不利益な情報を外部に出したとして、損害賠償責任を負わされることもありません。
なお、会社からの報復を恐れて公益通報が消極的になってはいけないので、匿名による通報制度もあります。
一方、たとえば、会社の評判を落として、自分が利益を得ようという目的、あるいは会社に対する嫌がらせ目的で通報した場合には、保護の対象になりませんので、会社としてもその従業員に対して然るべき措置をすることができます。また、公益通報として保護されるためには、相当の根拠に基づいて通報をする必要があります。ただ単に、社内での噂を耳にして、それを通報したという場合、相当の根拠があるとは言えませんので、やはり、保護の対象にはならないのです。

金森将也
つばさ総合法律事務所所長
上智大学法学部法律学科在学中に司法試験合格し、2003年4月、25歳の若さで「つばさ総合法律事務所」を設立。M&Aを含む企業法務案件を多く手がける。
出演経歴:日本テレビ「行列の出来る法律相談所」若手弁護士特集・メ~テレ「どですか」にレギュラー出演。
ご予約・金額等詳細については、052-971-7555まで
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